肌の赤みのお悩み
肌の赤みのお悩み

脂漏性皮膚炎は、頭皮や顔面など皮脂の分泌が多い部位にみられる慢性的な皮膚炎です。発症には、①皮脂の増加、②マラセチア属という種類の皮膚に常在するカビの増殖、③マラセチアに対する免疫異常、が関与していると考えられています。
皮脂を分泌する脂腺の活動は、新生児~乳児期までと思春期以降に活発になります。脂漏性皮膚炎にも発生時期によって乳児型と成人型があります。近年マスクの長期使用によっても脂漏性皮膚炎がみられることが分かってきました。HIV陽性患者では脂漏性皮膚炎の発症リスクが高く、皮膚症状が広範囲にみられることが知られています。皮膚症状は白色~黄色のフケ状の鱗屑(りんせつ)、黄色のかさぶたを伴った赤み(紅斑)が特徴で、かゆみを伴うことがあります。乳児型の脂漏性皮膚炎は自然に消退すると言われていますが、脂漏性皮膚炎を診断された症例の中にはアトピー性皮膚炎に移行することも少なくありません。成人型では頭部に限局した乾癬との鑑別が難しいことがあります。
治療は抗真菌薬の塗り薬や弱いステロイドの塗り薬です。日常生活ではストレスをため込まず、規則的な生活習慣を守り、洗顔や洗髪を適切に行って皮脂を溜めないようにしましょう。
にきびは、脂腺性毛包(毛穴から続くトンネルで、毛は短く脂腺がよく発達しているタイプ)の慢性炎症性疾患です。毛包内部に皮脂が貯まった状態の「面皰(めんぽう)」から始まり、それに続く炎症で丘疹や膿疱のような「炎症性皮疹」ができ、炎症が収まった後に毛包周囲に「瘢痕(はんこん)」を残すことがあります。にきびの発症にはたくさんの因子が関与しますが、主に①男性ホルモン(アンドロゲン)の作用で皮脂の分泌が増える、②毛穴が詰まることでアクネ桿菌が増える、③アクネ桿菌がつくる物質によって毛包に炎症が起こることで生じます。
顔や首、胸や背中に面皰、丘疹、膿疱、嚢腫、瘢痕などいろいろな程度の皮疹がみられ、通常かゆみはみられません。
標準的な治療の流れですが、まず急性炎症期は抗菌薬を含んだ塗り薬や飲み薬によって「炎症性皮疹」を改善し、つづく維持期ではアダパレン、過酸化ベンゾイルで「面皰」を治療します。これらの治療の一部が実施できなかったり、効果が不十分な場合には、ケミカルピーリング(自費)、漢方薬の内服、イソトレチノイン内服(自費)などを行います。スキンケアや毛穴をふさがないような化粧品を選ぶことも重要です。
酒さは、主に中高年の顔面に起こる慢性の炎症性皮膚疾患です。日本では紅斑毛細血管拡張型、丘疹膿疱型(酒さ性ざ瘡)、瘤腫型(鼻瘤)の3タイプがみられ、それぞれ推奨の治療が異なります。紅斑毛細血管拡張型ではスキンケアとレーザー・IPL(自費)、丘疹膿疱型ではメトロニダゾールの塗り薬と抗菌薬の飲み薬、アゼライン酸クリーム(自費)、瘤腫型(鼻瘤)ではレーザーアブレージョン(自費)などが検討されます。原因はわかっていませんが、日光や気温の変化、激しい運動、飲酒・辛い食べ物などの刺激が誘因とされます。日焼け止め、洗顔料や化粧品は刺激の少ないものを使いましょう。
似ている疾患に、顔面へのステロイド外用薬の不適切な使用による「酒さ様皮膚炎」があります。
毛細血管拡張症は、皮膚の浅い層にある毛細血管の拡張が持続するものの総称で、炎症を伴わないことが特徴です。手掌紅斑、クモ状血管腫、紙幣状皮膚などのタイプがあります。顔や胸、手のひらや腕に見られることが多く、自覚症状は伴いません。妊娠や肝硬変などによる血中のエストロゲン上昇との関連が考えられていますが、健常者でもみられることがあります。
クモ状血管腫や紙幣状皮膚などで見た目が気になる場合には、レーザー・IPL(自費)が可能です。繰り返しの照射で徐々に目立たなくなることが多いため、お気軽にご相談ください。
銀白色の厚い鱗屑(りんせつ)を伴った紅斑(赤い斑点)が全身に多発する病気です。頭、肘、膝、おしりなど刺激を受けやすい部位にできやすく、爪症状や関節症状を伴うことがあります。
られます。軽いかゆみが半数程度の方にみられます。乾癬は遺伝的な素因に肥満、喫煙などのさまざまな環境因子が加わって発症します。単なる皮膚病ではなく、メタボリックシンドロームや心血管系疾患、炎症性腸疾患などとの関連がわかり、慢性の全身炎症と考えられています。治療は活性型ビタミンD3やステロイドの塗り薬が基本となります。中等症~重症の場合には飲み薬や光線療法を併用します。それでも効果が不十分な場合には生物学的製剤の注射薬が検討されます。
薬疹は、体内に摂取した薬やその代謝産物によってみられ、①アレルギー性の場合と②薬そのものの作用で起こる場合があります。
薬疹の診断には、薬歴だけでなく、市販の健康食品や漢方薬を含めた詳細な問診が大切です。アレルギー性の場合の多くは薬の投与から2週間程度で出現しますが、長期内服後に出現するタイプもあります。皮膚症状は原因薬の種類によってもさまざまです。重症例では発熱、肝機能障害、腎機能障害などが起こり、まれに致死的になることがあります。
治療は原因となる薬剤の特定と中止、ステロイドの塗り薬や抗ヒスタミン薬の飲み薬、重症の場合はステロイドの内服・点滴治療が必要となることもあります。過去に薬疹を起こした経験がある方は、同じ薬が処方されてしまうことを避けるため、診察時に必ず医師に伝えてください。薬疹を疑っても自己判断で薬を中止することは避け、まず主治医や専門医に相談しましょう。
凍瘡は、寒さや急激な温度変化により血行が悪くなって皮膚に炎症が生じる状態で、いわゆる「しもやけ」として知られています。手足、耳、頬などに赤みや腫れ、かゆみ、痛みが出現し、ひどい場合には水ぶくれやただれになることもあります。寒冷環境に長くさらされることが原因で、特に冷え性の方や子ども、高齢者に多くみられます。生活上では、手袋や厚手の靴下を着用し、身体を冷やさないこと、濡れた状態を放置しないことが予防につながります。治療は、血行を改善する飲み薬や塗り薬のほか、炎症が強い場合はステロイドの塗り薬を用います。寒い季節には繰り返しやすいため、早めの対応と予防が大切です。我慢せず、ご相談ください。
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