毛・爪・汗のお悩み
毛・爪・汗のお悩み

円形脱毛症は、前駆症状や自覚症状がなく、突然全身の有毛部の一部の毛が抜けて円形や類円形の脱毛斑ができる疾患です。髪の毛に最も多くみられますが、眉毛やまつ毛、体毛にも生じることがあります。男女を問わず幅広い年齢層の方にみられ、原因ははっきりわかっていませんが、自分のリンパ球(という免疫系の細胞)が自分の毛包を攻撃してしまう「自己免疫疾患」の一種と考えられています。遺伝的になりやすい背景がある方や、精神的ストレス、疲労、ウイルス感染症などがきっかけとなっている方もいますが、はっきりとしたきっかけがなく起こる方も多くおられます。
甲状腺疾患、全身性エリテマトーデス、尋常性白斑、関節リウマチ、Ⅰ型糖尿病などの「自己免疫疾患」が合併することが知られており、円形脱毛症の方ではアトピー性疾患や鉄欠乏性貧血などもよくみられます。
円形脱毛症は脱毛範囲によって、通常型(単発型、多発型)、蛇行型(ophiasis)、全頭型、汎発型、びまん型などに分類されます。臨床経過による分類としては急速進行型があり、その中の一部には無治療で自然に回復するself-healing acute diffuse and total alopeciaが報告されています。
生活上では、心身ともに十分な休息を心がけ、体調をととのえることが大切です。治療はステロイド外用薬、ステロイド局所注射、局所免疫療法(自費)、光線療法、液体窒素による冷却療法などがあり、重症例にはJAK阻害薬の内服などを検討します。いくつかの治療が併用されることもあります。まずはお気軽にご相談ください。
休止期脱毛症は、何らかの原因で成長期にある毛包が休止期に移行することで起こる、びまん性の脱毛です。高熱、手術、強い精神的ストレス、出産、外傷、急激なダイエット、貧血、微量元素の不足などが誘因となり、その2~3か月後にシャンプーやブラッシングの際に大量に髪が抜けるようになり、頭髪全体が薄くなります。ただし毛根に炎症や瘢痕はなく、痛みやかゆみを伴いません。基本的に一過性の現象で、半年ほどで自然に改善することが多いですが、慢性化するケースもあります。当院ではミノキシジルの外用をお勧めしています。早めに医師の診断を受けることで、安心して経過をみることができます。
巻き爪(陥入爪)は、爪の端が皮膚に食い込んで炎症をおこしている状態で、特に足の親指に多くみられます。靴の圧迫、不適当な爪切り(ふかづめ)、爪白癬、外傷、足のむくみなどが原因とされます。食い込んだ部分に炎症が起きると、痛み、腫れ、時に膿が出たり肉芽ができたりすることもあります。症状が強いと歩行にも支障をきたすため、日常生活の質を下げることにつながります。生活上の注意点としては、①正しく爪を切る(角を落とさずまっすぐ指先と同じ長さに切る)、②足の圧迫を避ける、③衛生的なフットケアなどが挙げられます。治療は、軽症であればテーピングや綿球・チューブ挿入による保護法、進行例ではワイヤーやクリップを用いた矯正法(自費)、重症例にはフェノール法などの手術も行われます。痛みは我慢せず、お早めにご相談ください。
爪白癬は、水虫の原因である白癬菌による爪の感染症です。足の指の爪に多く、爪が白く濁ったり、厚くなったり、もろく欠けたりするのが特徴です。足白癬(いわゆる水虫)から波及するケースがほとんどです。進行すると日常生活に支障をきたすだけでなく、周囲の人への感染源にもなります。治療の第一選択は内服薬(ホスラブコナゾール、イトラコナゾール、テルビナフィン)です。合併症や併用薬、妊娠の可能性などで内服薬が使えない場合や希望されない場合には、爪専用の外用薬(ルリコナゾール、エフィナコナゾール)が用いられます。治療期間は1年以上に及ぶことも多く、継続的な受診が大切です。
多汗症は、通常の量を超える大量の発汗によって日常生活に支障をきたす疾患です。全身の発汗が増える「全身性多汗症」と一部のみの発汗が増える「局所性多汗症」があり、特に原因のない「特発性」のものと、他の疾患に合併しておこる「続発性」のものがあります。
「原発性局所多汗症」には①腋窩多汗症(わき)、②掌蹠多汗症(手のひら、足の裏)、③頭部顔面多汗症があり、10代~20代に発症することが多いと言われています。原因ははっきりしていませんが、汗腺の数や大きさは変わらないことから、遺伝的な体質や自律神経の働きが関係した汗腺の機能の亢進と考えられています。HDSS(Hyperhidrosis Disease Severity Scale)という原発性局所多汗症の重症度を自覚症状により分類する指標があり、過剰な発汗により日常生活に頻繁に支障をきたす(HDSS 3以上)場合には治療が薦められます。治療には外用薬、内服薬、ボトックス局所注射、水道水イオントフォレーシス、重症例には交感神経遮断術といった手術が検討されます。近年あたらしい外用薬が承認され、治療の選択肢が広がりました。ぜひお気軽にご相談ください。
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